年金ニュースレター第21号
確定拠出年金の拠出限度額引き上げについて

先日、企業型確定拠出年金制度(DC)の拠出限度額を引き上げる旨の政令が公布された。引き上げ後の拠出限度額の月額は以下のとおりであり、2014年10月より施行される。
他に企業年金制度(確定給付企業年金や厚生年金基金など)がない場合:55,000円(現行:51,000円)
他に企業年金制度(確定給付企業年金や厚生年金基金など)がある場合:27,500円(現行:25,500円)

2001年のDC導入時は拠出限度額が36,000円(他に企業年金制度がない場合)だったので、10数年で約1.5倍まで拡大されたことになる。
仮にDCのみで、22歳から60歳まで38年間全従業員に一律毎月55,000円を拠出すると、元本合計は約2,500万円(=55,000×12×38)となり、毎年の運用利回りを2%とすると60歳時点のDC残高は約3,700万円となる。

一般的にはこうした一律の掛金額設定ではなく、例えば基本給の数%をDC掛金とするとする設計が多い。そこで、22歳の拠出額を27,500円(=55,000÷2)とし59歳で55,000円になるよう年齢毎に拠出額上がっていく拠出モデルを考えると、運用利回りを2%で60歳時点のDC残高は約2,700万円となった。これは、弊社が実施した2013年退職給付サーベイにおける60歳時点給付水準の中位値と同水準であり、DCのみという選択肢でもマーケット水準の給付を提供できるものと考えられる。

しかしながら、すべての退職金原資の運用を従業員に委ねるというのは、労使ともに抵抗を感じる先は少なくないものと思われる。上記サーベイで給付形態について質問したところ、DCのみという企業はまだまだ少数派であり、DCと他の制度を組みわせるのが主流であるようで、中でもDCとキャッシュバランスプラン(CB)の組み合わせが最も多かった。今回の拠出上限が引き上げられたことにより、DCのみとする企業が増えてくるか、今後の動向に注目したい。

もちろん、今回拠出上限が引き上げられたからといって、必ずしも現行制度の上限額を変更しなければいけないわけではない。ただし、DC規約に拠出上限値を「法令の拠出限度額を上限とする」旨記載されている場合は、自動的に上限が引き上げられることになるため、その旨従業員に周知する必要がある点、ご留意されたい。

また、上記に加え、DC上限超過額分を確定給付企業年金(DB)のCB持分付与に加算している場合、DC拠出額は自動的に増加する一方、DB規約には例えば「基本給×5%(=DC掛金)が25,5000円を超過する分その超過分をCB持分付与に加算する」のように、設計当時のDC拠出上限額の固定額としているケースが多いため、DB規約を変更しないとすれば、会社からの持ち出しが増えてしまうことになる。ただし、DB規約を変更すると、今度は拠出上限が上がった分だけCBへの付与額が減少することになるため、確定給付企業年金制度上の給付減額に該当する可能性がある。2014年10月の施行日までに自社の年金規約をご確認されることをお勧めする。

DC制度は、2012年4月から従業員拠出が導入され、2014年1月から資格喪失年齢が60歳から65歳へ引き上げられるなど、企業側のニーズに対応した改善が行われてきている。
参考 - 第12号: 確定拠出年金法の一部改正について

ただし、先に述べた通り、すべての退職金原資の運用を従業員に委ねることへの抵抗感は引き続き存在するものと思われる。そこで、2014年4月より認められることとなった「運用実績を指標としたCB」に期待がかかる。これを基に上手く設計すれば、元本保証付きのDCのような制度をCBにて実現できる可能性もある。具体的な内容については、次の機会に取り上げてみたい。

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