AI、機械学習、データアナリティクスの専門家やシステム開発人材の獲得競争は、今や世界中で加速しています。日本でも、実際に高度専門人材を探すとインド人に出会う確率が高く、インドのデジタルパワーを感じたことがある方も多いのではないでしょうか?マーサーインドで豊富な経験を持つコンサルタントによる解説記事を日本語に翻訳・編集してお届けします。
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2022年度は、インドのテクノロジー産業が目覚ましい成長を遂げた年です。デジタルとイノベーションの掛け合わせを勝ちパターンにして、テクノロジー産業の成長率は過去最高の前年比15.5%を記録、売上高は2,270億USDに達しました。また、当該産業で働く就業者数が500万人を突破したことも画期的な出来事といえるでしょう。テクノロジー企業は「人材ファースト」を掲げて、いち早くハイブリッド型ワークモデルを取り入れることで、プログラム開発の能力/規模の急拡大を実現しました。
現在、インドの国内総生産に占めるデジタルの割合は30~32%、就業国民の3人に1人がデジタル技術を身につけています。これによりグローバルソーシング市場において、インドは59%のシェアを占め「グローバルデジタル人材大国」としての確固たる地位を築いています。以前は、デジタル技術の普及やテクノロジー産業の成長の一方で、技術知識を持つ人と持たない人の間に生まれる経済格差が深刻化しており、デジタル産業、ひいては国全体の成長にも影響を及ぼしていました。
この格差を埋めるため、2015年7月、インド政府は「デジタルインド」構想を打ち出し、小さな農村部までを含むインド全土におけるインターネットインフラを整備、電子政府、モバイルe健康サービス、デジタルファイナンスなどさまざまな取組みを通じて、全国民のライフスタイルのデジタル化を推進しました。
さらに、デジタル化の進展を遂げたインドでは、安価に設定されたデータ通信料のおかげで誰もがインターネットへアクセスすることができ、デジタル決済インターフェース(UPI)の利用も直近2年で倍増しました。UPI経由の取引数は、2020年3月の12.5億件から2021年3月には27.3億件(>2倍)まで伸びています。これらの政策によってインドは数年の間に、デジタルインドへと変身を遂げました。
また、政府のデジタル技術を駆使した経済施策は、すべての産業を潤すと予想され、情報技術・ビジネスプロセス管理、デジタル通信サービス、電子機器製造などの中核デジタル分野は、2025年までにGDPが3550~4350億USDへと倍増が見込まれています。
今日の世界では、企業だけでなく国という単位でも人材獲得競争に勝つことが、経済やビジネスの勝負を決める時代です。政府は世界中の人々が、デジタル技術といえばインドをイメージし、世界の人材市場でデジタル人材のハブとしての位置づけを確立することを目指して、National Association of Software & Services Companies(NASSCOM)と協力して、国を挙げたデジタル人材の育成施策を推進しています。
例えば、電子情報技術省とNASSCOMが立ち上げたFutureSkills Primeは、デジタル技術のスキルアップインセンティブプログラムのプラットフォームです。これは、国内のイノベーションと人材のスキルアップ・リスキリングのためのポータルです。AI技術を活用して急速に変化する市場の人材ニーズ、特に若年層の人材需給ギャップに対して、インドの就労層にデジタル技術訓練の提供を通じてギャップ解消を支援しています。インドでは、政府と業界が一体となって、デジタル人材を国の重要な競争力の1つとして育成しているのです。
パンデミックによって、企業におけるデジタル変革は加速の一途をたどり、インドではデジタル人材市場がますます過熱しています。市場のデジタル人材は、自分の市場価値とビジネス価値を十分に認識しており、激しい争奪が繰り広げられる中、競うようにインド企業は、優秀なデジタル人材を獲得し引き留めるために様々な工夫をこらした施策を実施しています。今日はその中から10の施策をご紹介します。これらの施策の中に、現状の日本企業にとって参考となる点があるのではないでしょうか?
デジタル人材は、年齢、職業、性別、就業地などの項目によって定義されるものではありません。デジタルマーケター、ソーシャルメディア戦略担当、データサイエンティストなど、新しいジョブのキャリアパスは従来のテクニカルスキルとビジネススキルの組み合わせによって形作られています。テクニカルスキルとしては、単に技術の使い方を知るだけでなく、その背景も含めた理解が求められます。デジタル人材とは、テクノロジーとビジネスを等しく使いこなす、進化したプロフェッショナルといえるでしょう。
ここ数年、ハイテク業界に限らずデジタル技術を駆使できる人材の獲得・育成・定着は、すべてのリーダーや人事担当者にとって重要な課題の一つです。デジタル人材の需給ギャップが広がっているだけでなく、適切な人材を適切なタイミングで確保できないことによる機会損失に直面しています。この職種の離職率の上昇と人材不足は、世界的な現象です。
技術の進展は、人材に求めるスキルだけでなく、業務戦略や仕事の進め方、職場環境、マインドセットにも影響を与え、伝統的な環境では、デジタル人材を十分に活用できない、または職場に引き留められないケースも見受けられます。デジタル人材の多くは、Z世代、ミレニアル世代などデジタルネイティブ世代です。彼らを惹きつけるには、組織の文化にもデジタルを導入していく必要があります。技術的側面だけでなく、革新的で柔軟な思考や多様性の確保など、組織は組織文化の改革を加速させることが不可欠です。
伝統的な仕事観 | デジタルベースの仕事観 | |
戦略 | 効率 | イノベーション |
文化 | 階層 | 協働 |
人材 | 低コスト | 高スキル |
テクノロジー | システム構築 | クラウド、モバイル、アプリ開発 |
プロジェクトマネジメント | ウォータフォール式 | アジャイル |
ビジネスモデル | サービス・サポート提供 | 提携・パートナーシップ |
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