運用コンサル
年金運用の高度化戦略 資産配分管理(最終回) 伝統的資産投資の背景を再考する
本連載の最後に、内外債券、内外株式のいわゆる伝統的4資産管理について扱う。なぜこれらの資産に、政策的に配分比率を設けて投資するのか。例えば本連載第2回で触れたように、それはこれらの資産を長期投資に値する資産と見込んでいるからであり、つまり、「一時的に下落することはあってもいつかは戻り、当初要求した収益を生み出す」と考えているということだ。さて本当にそう考えてよいか。
【長期投資資産の選択】
長期投資に値する資産を選ぶ際、まず確認したいことは、その資産が長期的に収益を生み出すと考える根拠だ。債券は分かりやすい。満期に元本が返ってきさえすれば、期間中に受け取った利息収入分が全て収益となるからだ。外国債券のベンチマークとして、高格付国債指数が一般的に使われているのも、「元本の毀損可能性を最小限に抑える」という観点から理解できる。
これに対し、株式は少し分かりにくい。債券利回りを下回るような収益しか期待できない企業は長い目で見て淘汰されているはず、というロジックで説明してみよう。
逆に言えば、株式市場において時価総額の占める割合が大きく、投資成果に実質的に影響を与える企業群には、債券利回りを上回る収益を期待できるということだが、そのためには条件がある。それは、市場が銘柄のそれぞれに合理的な価格を与えているという条件だ。淘汰されるべき企業に高い値段をつけないのはもちろんのこと、優れた利益を生み出す企業に対しても、将来、生み出す利益に対して極端に高い値段が付いていれば、購入価格が高くなりすぎて投資家は思ったような投資収益を得られない。いかなる銘柄も、常に適正価格で売買されているという条件が必要だ。
もちろん、適正価格で売買されているかどうか事前に知ることはできない。しかし、市場を相対比較したときに、どのような市場ならばその条件が成り立ちそうか考察することはできる。
1つには規模が十分に大きいことが挙げられる。少し大きな資金が流れてきただけで価格が高騰してしまうような規模の小さな市場は、資金フローが価格を左右する結果、適正とは考えにくい価格で売買されることも多くなる。とりわけ割高な時期に投資してしまうと、「長期的に収益を生み出す」とは限らない。
数多くの投資家が公平に、売買に支障なく参加していることも条件の1つといえる。数多くの投資家の調査分析にさらされることによって、市場の価格発見機能が高まると考えられるからだ。これらの条件を満たす市場として、先進国の(大型)株式市場が一般的に選ばれている。この点はおそらく理解できるだろう。
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