企業年金におけるESG投資の現状

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2019年5月31日、国土交通省による「気候変動を踏まえた治水計画に係る技術検討会」1の提言骨子案がまとまったとの報道がされた。検討会の資料では、「顕在化している気候変動の影響と今後の予測」として温暖化は疑う余地がなく、降雨への影響として、既に現在は強雨の発生件数が30年前の約1.4倍に増加、そして今後は1時間降雨量50mm以上の発生回数が2倍以上に増加すると予測している。「1時間降雨量50mm以上の雨」とは水しぶきで視界が悪くなり、車の運転すら危険になるほどの凄まじい降雨2である。勿論、降雨だけに留まらず、台風、局所豪雨、前線についても予測がされているが、いずれも将来的に水害の脅威が増すことを示唆している。内閣府発表の「過去5年の激甚災害の指定状況一覧」3を見ると、既に過去多くの水害が激甚災害にまで至っており、検討会の資料では、今後更に増すことが予測される気候変動の影響に対して、まさに今、真摯に取り組まなければならないという切迫感のある内容となっている。実際、2019年も梅雨入り早々に西日本で「警戒レベル4(全員避難)」4の大雨となるなど、私たちの生活に影響を及ぼす身近な問題として危惧される状況である。(本稿執筆中の2019年7月1日も九州南部における大雨から広域にわたり避難勧告が発令されており、降雨が差し迫った脅威となっている)

上述の内容はESG要素のE(Environment:環境)の重要性を示す一例だが、これに限らず、S(Social:社会)やG(Governance:ガバナンス)についても事例を挙げれば枚挙にいとまがなく、既に企業や個人において重要かつ主要なテーマになったと言っても過言ではない。資産運用業界では、ESG要素への取り組みはESG投資として、その重要性だけではなく、新たなビジネスの機会にもなり得るとの見通しから、運用機関や弊社のようなコンサルティング会社などの期待も大きい。しかし重要なテーマであるはずなのだが、実際には複数の企業年金からESG投資への取り組みに対する戸惑いの声を耳にすることもあり、温度差を感じることもある。そこで足元のESG投資の現状について考えたい。

1国土交通省 気候変動を踏まえた治水計画に係る技術検討会 第4回配布資料 「資料2-1 気候変動により変化する外力」より (http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/chisui_kentoukai/index.html
2気象庁 「雨の強さと振り方」より (http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/chisui_kentoukai/index.html
3内閣府 過去5年の激甚災害の指定状況一覧より (http://www.bousai.go.jp/taisaku/gekijinhukko/list.html
4内閣府 避難勧告等に関するガイドラインの改定(平成31年3月29日) 警戒レベルを用いた避難勧告等の発令について (http://www.bousai.go.jp/oukyu/hinankankoku/h30_hinankankoku_guideline/index.html

 

資料からの抜粋




 

執筆者: 辰己 有 (たつみ ゆたか)
資産運用コンサルティング
コンサルタント


 

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