年金ニュースレター第9号
米国会計基準の改正動向について(続報)

前号(年金ニュースレター第7号)にてご説明しましたとおり、現在、米国財務会計基準審議会(FASB)では、総合型厚生年金基金などのいわゆる複数事業主制度に関する情報開示の強化を検討しております。前号を配信した時点で未公表だった公開草案が、先日ようやく公表されましたので、今回はその内容につきご説明します。

開示が必要となる情報

FASBは公開草案に対し今年の11月1日までコメントの受付期間を設けていますが、もし現行の公開草案がそのまま認められますと、総合型厚生年金基金などに加入している企業は、以下の情報を用意することが義務付けられます。

  1. 重要な制度の属性
  2. 年金・一時金給付額並びに掛金の算定方法を含む重要な取り決め
  3. 年金資産額と年金債務(もし取得可能であれば) ・・・年金債務は、数理債務または責任準備金が考えられる
  4. 制度全体に対する自社の掛金、加入者数と受給者数の割合(もし取得可能であれば)
  5. 自社の総従業員数に対する、当該制度に加入する従業員の割合
  6. 当期の掛金総額、翌期の予測掛金総額並びに今後の掛金額の見通し
  7. 基金脱退時に必要となる特別掛金の見込み(もし取得可能であれば)
  8. 以下の項目に関する定性的なコメント
    • 自社がさらされている、制度が内包する重要なリスク要因
    • 厚生年金基金における代議員会などの、意思決定機関への自社の関与度合い
    • 制度の「危険度合い」の状況
    • 既に実施されている、または現在検討されている、積立状況の改善策と、それによる自社への影響

ちなみに、現行の基準に基づく複数事業主制度にかかる退職給付会計では、当該制度へと当期中に拠出した事業主掛金の総額を費用計上することが求められていますが、複数事業主制度自体の積立状況などの情報については開示する必要はありませんでした。

改正の影響

もし現行案どおりに改訂が決まれば、今年の12月15日以降に決算日を迎える会計年度から追加の情報開示を行うこととなります。

現時点では、上記のどこまでがFASBによって最終的に盛り込まれるか分かりませんが、混乱を避けるために、すべての内容が盛り込まれる前提で、情報収集を開始する事をお勧めいたします。