年金ニュースレター第7号
米国会計基準の改正動向について

米国財務会計基準審議会は2010年4月14日のミーティングにおいて、複数事業主制度に関する開示を追加するという結論に至りました。本ニュースレターでは、この開示の追加内容についてご説明いたします。

我が国における企業年金制度では、総合型厚生年金基金や総合型確定給付企業年金制度がこの複数事業主制度に該当するものと考えられます。これらの制度に加入している会社では追加の開示が必要となります。

現状の開示

複数事業主制度については、制度への掛金の要拠出額を費用処理する方法が行われます。つまり、退職給付債務から年金資産を控除した金額を負債計上する、といった通常の会計処理は行われません。注記ではこの要拠出額が開示されます。

また、複数事業主制度からの脱退を検討している場合には、脱退時に拠出すべき掛金額がその発生の可能性や金額の確実性に応じて、注記または負債計上されます。いずれにせよ、脱退時に突然大きなコストが認識されることとなり、これが問題視されています。

開示が必要となる事項
  1. 複数事業主制度の特徴と積立状況について
    • 制度の年金資産、債務および(現時点および将来の)掛金の状況の要約
  2. 複数事業主制度に対する会社の関与の度合いについて
    • 複数事業主制度に加入している従業員数またはその割合
    • その会社の、制度全体に対する加入者数または掛金額の割合
  3. 年金資産額と年金債務(もし取得可能であれば) ・・・年金債務は、数理債務または責任準備金が考えられる
    • 翌年度に予定されている掛金の拠出額
    • 現時点で脱退すると仮定した場合に会社が負担することとなる債務
    • 将来的な掛金の予測(会社が運用方針や掛金の決定に影響を与えることのできる度合いについての定性的な記述を含む)
改正の影響

昨今の運用環境の悪化により、積立不足を抱えている総合型厚生年金基金も少なくありません。このような制度では脱退したと仮定した場合に必要となる掛金額も大きくなると考えられ、あくまでも注記の中での開示ではありますが、ネガティブなインパクトを与えることとなります。

また、情報の収集体制を構築しておくことが必要となります。さらには、そもそもの制度内容の再検討といった対応が必要になることも考えられます。

適用に向けたスケジュール・適用時期等

当初の予定では、

  • 5月中:公開草案を公表、60日間のパブリック・コメント募集
  • 2010年第4四半期の初旬:改正基準を公表
  • 2010年12月15日以降終了する会計年度末から適用

とされていましたが、5月中の公開草案の公表もなされていない状況です。