Diversity, Equity & Inclusion

ロールモデル対談 第2回

*インタビュー本文はジョンソン・エンド・ジョンソンの表記「DE&I」に従って作成しています。

ジョンソン・エンド・ジョンソン x Mercer

第2回
経営理念でも謳われる多様性を社員一人ひとりが実践

目次

 

ジョンソン・エンド・ジョンソン

ビジネスユニットHR リーダー
工藤 麻依子 様


ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社に新卒入社し、営業・マーケティングを経てHRへ異動。現在はサージカルビジョン事業部のシニアリーダーシップチームの一員として、ビジネス戦略達成のための人材育成施策の立案・推進等に従事。同時に、全社のDE&I PMO(プロジェクト・マネージメント・オフィス)として、日本におけるDE&Iの浸透を加速する取り組みを展開中


インタビュアー:三宅 遥

組織・人事変革コンサルティング部門 アソシエイト

 

 

企業理念に謳われる多様性。グローバル戦略の下、日常業務の中での実現を目指す

 

経営戦略上のDE&Iの位置付けについて伺えますか

 

(工藤様)ジョンソン・エンド・ジョンソンの企業理念である「我が信条(Our Credo)」には、「社員一人ひとりが個人として尊重され、受け入れられる職場環境を提供しなければならない。社員の多様性と尊厳が尊重され、その価値が認められなければならない」と明記されています。従って、DE&Iは何か特別なことというわけではなく、自分たちのベースにあるものという位置付けです。

 

 

グローバルでのDE&Iの方針や、日本支社での施策との関連性について教えてください

 

グローバルでのコンセプトは、”You Belong.”といって、「一人ひとりが受け入れられて居場所がある」状態を作っていくことを目指すものです。つまり、特別な時だけ行うというものではなく、日常業務の中でDE&Iを実現するという方針が掲げられています。その中で、グローバルで「インクルージョンとイノベーションの文化を推進する」「未来のために多様性に満ちた組織を築く」「ビジネスの成果とレピュテーションを高める」という3つの戦略が定められ、日本でもその戦略に沿ってDE&I施策が実行されています。

 

 

経営、人事、社員がそれぞれの役割でDE&Iを推進。中でも社員による自発的な活動がユニーク

 

DE&Iの推進にあたって、President Council(経営陣)、人事、ERG(Employee Resource Group:社員有志の自発的な活動グループ)、DE&I Councilの連携体制はどのようなものでしょうか

 

President Councilは、プレジデント(経営陣)としてDE&Iの推進にコミットし、DE&Iに関する指針や重要性を社内外に明確に表明して、様々な活動をサポートしています。人事は、文化を醸成するための制度やトレーニング、リソース整備を担っています。そして、文化は誰かが作るものではなく皆で作るものであるという考えの下、社員の有志が集まったERGが、社員のDE&I意識を高めるために全社員に向けて活動をしています。ERGは世界に12のテーマがあり、日本では、日本においてニーズが高いと考えられるテーマについて社員が提案し、会社の承認を経て活動をしています。そしてこれらの活動を、DE&I Council(各組織の代表やビジネスユニット・人事・広報などが集まるアドバイザリーボード)が横断的にサポートしています。

 

ジョンソン・エンド・ジョンソンではERGによる社員の自発的な活動が盛んであることが特徴かと思いますが、中でも面白い取り組みや注目すべき活動はありますか

 

Women’s Leadership & InclusionというERGグループでは、2005年に日本での活動を開始して以来、今年初めて参加者の半数が男性となるなど、ジェンダーを超えた活動を推進しています。ジェンダーダイバーシティや女性活躍支援というと、従来は「若い女性がマネジャーになる」「産休育休を経て復帰する」という部分がフォーカスされていましたが、現在では医学的な観点から見たジェンダーの違いや、キャリア形成に関する学びの場を提供するなど、ジェンダーの垣根を越え、全社員が自分らしく働けるという視点での取り組みを行っています。 

 

今年発足したGenerationNOWは、すべての世代を対象に、「世代を超えて今を一緒に生きる私たちが経験や価値観を共有し、価値を生み出していこう」というコンセプトで始まりました。今年は試験的にリバース・メンタリングを行い、経営陣自ら若い世代からメンタリングを受けました。

 

他にも、LGBTQ+とのその支援者から成るOpen&Out、障がい・メンタルヘルスなどの理解促進と支援活動を行うAlliance for Diverse Abilitiesがあり、社内向けの取り組みだけでなく対外的な活動も行うなど、DE&Iのリーディングカンパニーとして社会全体を良くしていくことを目指しています。

 

社員のDE&I意識を高める仕掛けとして、DE&I活動は目標設定等の人事制度に連動させていますか

 

全社員に求められるリーダーシップ行動には、多様性に関するリーダーシップも含まれ、それをベースに目標設定が行われます。また、ピープルリーダーは全員、DE&Iの目標設定が必須であり、DE&Iの取り組みに責任を持っています。目標設定は主に行動ベースとなり、例えば「チームメンバーにDE&Iのイベントへの参加を促す」「自分が中心となってチームメンバーとDE&Iを理解するワークショップを行う」などが挙げられます。また、DE&I推進活動全体では、イベントの参加人数の推移や満足度なども指標としています。私たちが皆で取り組むDE&I活動は、「社員一人ひとりが会社に居場所があると感じられる」のはどういう状態かということを追求するものと捉えています。

 

社員の意思を尊重しながらDE&I活動を実施。様々な取り組みを経験しながら、社員一人ひとりが文化を育む

 

これまでDE&I活動で苦労した点、工夫している点はありますか

 

DE&Iの活動には終わりがありません。何ができたら「できた」と言い切れるものでもないですし、目に見えない多様性や価値観もたくさんありますので、自分たちの今の姿を客観的に捉えようとする際に難しさを感じることがあります。また、会社としては様々な活動を行っていますが、積極的に参加したい人もいれば、そうでない人もいます。それも多様性の一つであり、実際DE&Iに関するイベントは必須参加にせず、任意参加というスタンスをとっています。そのような中でも、DE&Iをビジネスの力にし、イノベーションを生み出していくために、取り組みを継続していくことにおいてさらに努力が必要と考えています。

 

貴社では社員による自発的な活動が盛んであるなど、DE&Iを尊重する文化がかなり浸透している印象ですが、その背景には何があると思いますか

 

Women’s Leadership & Inclusionが2005年に日本で活動を開始して15年以上になります。当時は「我が信条(Our Credo)」もあり多様性も大事にしていましたが、どうしたらいいのかわからない、本当にビジネスに良い影響があるのか明確ではないという時代だったと思います。様々な取り組みを試行錯誤しながら行う中で、社員一人ひとりがDE&Iが大事であると実感し、会社もサポートを続けて形にしてきたということではないでしょうか。現在も、様々な取り組みを皆で経験しながら一人ひとりが文化を育んでいると思います。

 

2021年11月16日 対談実施

 

ジョンソン・エンド・ジョンソン x Mercer

写真撮影のために一時的にマスクを外しています


 

【編集後記】

 

女性営業マネジャーお二方へのインタビューでは、リーダーシップ像へのバイアスを打ち破り、マネジャーという新たな職種で活躍され、今後も新たな領域に挑戦していきたいと意欲的に語っておられることが印象的でした。また、お二人ともマネジャーを目指す上ではリーダーシッププログラムへの参加が大きかったとおっしゃっていたことから、改めてリーダーシッププログラムの有効性を感じました。

 

ジョンソン・エンド・ジョンソンのDE&I施策については、多様性が企業活動のベースであるという概念や、グローバル、そして日本での経営陣の方針と社員の自発的な取り組みがうまく共存していることが特徴的でした。また、目標を行動で設定するなど、随所に社員のことを信じ、自発性を重視する思想が見られ、社員の意思を尊重する姿勢が成功の秘訣なのではと思います。

 

先進企業とはいえ、地道な取り組みを通して一人ひとりが文化を育んでいるというジョンソン・エンド・ジョンソン。年代に応じた心身の変化に着目した取り組みや育休復帰後の中長期的なキャリア形成にフォーカスした取り組み等、次なる取り組みも進んでいるとのこと、今後も他企業の道しるべとなるのではないでしょうか。

 

 

インタビュアー