今後のベネフィット戦略 - 従業員構成の多様化にどう応えるか

人口が継続的に減少している影響で、人手不足、人材採用とその定着など、人材関連で大きな課題に企業は直面しています。その人材回りの課題への対策として、福利厚生制度の見直しを検討している企業も多いのではないでしょうか。

ベネフィット・マネジメント・プラットフォームを提供しているマーサーの子会社、トムソンズ・オンライン・ベネフィッツ社の調査によると、82%の多国籍企業は「採用力の強化・人材の定着」を目的としてベネフィット戦略を立てています。その次は、従業員エンゲージメントの強化(65%)、従業員の健康とウェルネスの促進(40%)が戦略の主な目的でした1

今の従業員は何を必要としているか?:多様化する従業員

今の労働人口は、急速に多様化しています。女性、外国人、シニア世代。従業員の構成が多様化することにより、従業員が必要としている福利厚生・ベネフィットも、従来の福利厚生制度では対応できない部分も多く出てくるかと思います。

女性社員比率の上昇
管理職の女性比率はまだ男性と同じレベルには達していないですが、徐々に増えており、メディアでも職場で活躍している女性が頻繁に取り上げられています。一方で、企業が女性社員の採用を促進していくにつれ、女性のライフイベントへの配慮とサポートがとても重要となります。企業のベネフィット戦略として、家庭とキャリアの両立を支援するプログラムの強化が、これまで以上に必要となります。
従業員の国籍の多様化
人手不足の課題を克服するため、外国人社員の採用を加速している企業もあります。日本人の人口が6年連続で減少しているところ、日本に住む外国人の人口は4年続けて上昇傾向です2。外国人従業員にとっても働きやすい環境づくりの一環として、福利厚生制度の見直しが必要な企業もあるかと思います。今後、外国人社員にとっても魅力的な制度がある企業こそ、人手不足の課題を乗り越えて行けるのかと思います。
定年延長・廃止によるシニア世代の増加
日本は、平均寿命が87.64歳(女性)と81.34歳(男性)で、今の60歳はまだまだ若いと思います3。内閣府が55歳以上を対象に調査を実施したところ、70歳以上まで働きたい方が約6割、75歳以上まで働きたい方が約3割、健康状態が維持される限り、働きたい方も多くいます4。定年延長や再雇用で、60歳以上の従業員が魅力的と感じる福利厚生制度がある企業は、経験と知識豊富な従業員の採用と定着を強化することができるようになるかと思います。

 

多様化に応えられるベネフィット戦略:フレックス・ベネフィット

上記の通り、急速に多様化していく企業の従業員の構成ですが、そうした人への様々なニーズを満たせる福利厚生制度は存在するのでしょうか?海外で普及している「フレックス・ベネフィット」はその一つのソリューションになり得るかと思います。フレックス・ベネフィットでは、従業員が自主的に個々のニーズに合ったプログラムを選択し、その従業員が自分のベネフィットパッケージを組み立てることが出来ます。したがって、今後採用していきたい候補者層が魅力的と感じるプログラムを用意することで、採用力も強化できると思います。

貴社にとっての最適とは?

A社の「採用力強化」のためのベネフィット戦略が、必ずしもB社のニーズに合致しているとは言い切れません。また、市場で普及している制度も、企業の本当のニーズに合っていない可能性があります。企業それぞれの特徴と潜在的ニーズを考慮したベネフィット戦略でなければ効果を得るのは難しいため、少なくとも下図の7点を分析し、戦略を組み立てる必要があります。私はマーサーへ入社後、複数の企業の福利厚生制度の見直しをサポートさせて頂きました。以前から想定していたニーズ以外も、潜在的なニーズの発見などがあり、その企業と従業員を知るとても良い機会でした。

給与だけではなく、企業のベネフィット戦略による働く環境とサポート体制が、優秀な人材の獲得に役立っていることを、前職で採用担当者を務めていたころ何度か経験した覚えがあります。これからはマーサーのEmployee Health & Benefitコンサルタントとして、多くの企業の福利厚生制度の見直しをお手伝いし、魅力的な制度構築を支援していきたいと思っています。

SOURCES:
1Thomsons Online Benefits, Global Employee Benefits Watch 2018/19
2http://www.stat.go.jp/data/jinsui/2016np/
3https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2019/zenbun/01pdf_index.html
4https://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h29/gaiyo/index.html


 

執筆者: 小笠原 亮子 (おがさわら りょうこ)
保健・福利厚生コンサルティング/ Mercer Marsh Benefits アソシエイトコンサルタント