執筆者: 永島 武偉(ながしま ぶい)
年金コンサルティング アソシエイト コンサルタント
4月は、新年度のスタートとして新たな気概を持つものである。 また新人が入社したり、異動があったりといろいろと変化の多い時期でもある。
最近は、1月のマイナス金利の導入により、10年国債の利回りがマイナスになったりと、金利に関する報道が頻繁にされ、一般の方も金利の影響というものを今までより強く意識するようになってきたと考える。
金利が企業年金に及ぼす影響として、よく挙げられるものとしては、
である。これらのうち特に従業員への給付にスポットを当てて考えてみる。
アクチュアリー試験をご存知であろうか。
アクチュアリーは、日本では主に生命保険会社や損害保険、信託銀行に属している者が多く、確率論や統計学を用いてリスクの評価・分析する専門家のことをいう。アクチュアリーの資格を得るためには年1回12月に実施される試験に計7科目合格しなければならず、合格率の低い難関資格として一部の関係者には知られている。
(筆者も受験中であり、もう少し一般的にも知られて欲しいと願っている…)
昨年の年末に行われた試験では、金利上昇が年金制度に及ぼす影響について、所見を問う問題が出題された。公的年金の年金額改定においても、インフレにより年金額が増加されたこともあり1、企業年金においてもインフレに関する議論は重要である。 また企業側は自身の制度において、インフレ等の経済環境が給付に及ぼす影響について、理解する必要性は高いものと考える。 以下で筆者の回答案を紹介する。
1. ポイント制を採用している企業
インフレに応じてポイント単価を引き上げない限り、基本的に給付額の実質的価値は低下する。ポイント単価の改定率をインフレ率に連動させることで退職時の給付額の実質的価値は維持される。ただ、ポイント単価を一定の期間で見直すことは前例が少ないため、あまり議論する企業は少ないことと思われる。例えば毎年(もしくは5年ごとに実施する財政再計算のタイミング等)、経済指標を基に労使間で協議を行うことを検討することは望ましいと考える。
2. キャッシュバランスプランを採用している企業
再評価率の指標がインフレと相関が強い場合、かつ毎期の拠出付与額のベースがインフレを反映する場合であれば(給与等)、給付額の実質的価値は維持される。
最終給与比例制からポイント制・キャッシュバランスプランへ移行した(する)企業は多い。各期の貢献を企業年金にも反映させることや財務的なリスクの安定化を期待できるが、加えてインフレ等の経済環境の変化にも反映することができる制度となるよう、上述のような検討が必要である。
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