コンサルタントコラム 710
一生に一度の買い物だから

「持つべきか、持たざるべきか・・・」
筆者と同世代のパパ、ママでライフプランとしてマイホームを買うか、賃貸物件に住み続けるか、悩んでいる方も少なからずいるのではないか。筆者には無縁な悩みかと思っていたが、思いもよらず浮上してきた。

筆者は賃貸物件に住んでいる。賃貸のメリットは、ライフステージにより気軽に住まいを変えられる。例えば、物件を選べば、礼金・仲介手数料・更新料が不要のものもある。こうなれば移動の自由はかなり担保できる。主なデメリットといえば、やはり家賃を払い続けても自分の所有物にならないということをライフプラン上、考慮しなければならないということくらいであろうか。 また、そもそも政治、経済など何かと不安定な世の中で高額なローンを背負う気もなかった。

そんな筆者ながら、最近の休日の活動にマンション見物を加えた。ことの発端は、日銀のマイナス金利政策の(間接的な)影響により、住宅ローン金利が過去最低水準というニュースを耳にしたからである。不動産については、ずぶの素人である筆者の皮算用でも、やはり現在居住している地域の同等の物件を購入した場合、月額賃料より安い金額で所有できる可能性があることは魅力的に思えて仕方ない。「さらに、住宅ローン減税制度で国も住宅取得を後押ししているではないか。何を迷う必要があろうか」というストーリーである。

話は変わるが、筆者は、海外駐在員の報酬決定のためのデータ・サービスの提供・コンサルティングに従事している。この分野でもクライアントより住宅に関連する課題が折々持ち込まれる。

弊社が推奨し、現時点で最も多くの企業に採用されている海外駐在員の報酬決定方式である「購買力補償方式」は、海外駐在員が3年~5年の任期で海外派遣され帰国することを前提とした報酬制度である。また、大多数の企業が、海外赴任中の任地の住宅費は原則、会社負担としている。

そのような背景から、海外駐在員報酬制度(主に購買力補償方式)の課題として「海外駐在員の報酬から本国の住宅費(みなし)を控除するべきかどうか」が挙げられることがある。上述のとおり、任地の住宅費を会社負担とするならば、どのように国内勤務者との公平性を保つべきかという議論である。

近年の弊社の日本から海外に社員を派遣している企業に対する調査では、過半数以上の企業が任地の住宅費の自己負担分として本国の住宅費(みなし)を控除しているとの結果があり、制度上のプラクティスとなっていると言える。

筆者が、もしマイホームを購入後に海外駐在をすることになった場合に思いを寄せてみた。この制度をもつ会社に勤務しているならば、本国の住宅費(みなし)を給与より控除され、加えて日本のマイホームの住宅ローンを支払わなければならない。これを住宅費の二重負担とするのか、持ち家は資産形成の一部ととらえ仕方ないとするかは考えようであろうか。
海外駐在員にとって、会社の住宅施策はインパクトがある。その制度構築の支援に携わる者としてしっかりと業務に励みたいとの思いを強くしている。

話は筆者のマイホームに戻る。前段で、マイホーム購入に前のめりな印象を与えたかもしれないが、実際は、今購入すると割高ではないか。将来人口が減少した場合住宅市況にどのような影響を与えるかなど慎重となり決断ができずにいる。
最近、筆者はつり革広告で見る「家は一生に一度の買い物」という言葉が気になって仕方がない。通勤電車でマイホームに思いを馳せる今日この頃である。