執筆者: 石本 一郎(いしもと いちろう)
プロダクト・ソリューションズ コンサルタント
時代は遡り、2000年初頭。筆者は、ドイツの現地企業に就職した。欧州の日系企業にサービスを展開する業態であったので、公私とも多くの日本人のダイレクタークラスの方の生活を垣間見ることができた。家族帯同の方が多く、高級エリアにある住居、車は大きなドイツ車、休日の近隣諸国への旅行、日本食レストランでの頻繁な食事、一時帰国におけるビジネスクラスの利用など、必ずしもご本人の希望で駐在員となったわけではないという事情を差し引いても、赴任生活を十分エンジョイされている方もおり、心から羨ましく思ったものだ。
さて、時は流れ、筆者は現職において日本企業の海外派遣者報酬制度に関するサービスに従事している。業務を通じてみえる現在の企業の考える海外派遣者報酬制度のあるべき姿(方向性)は、筆者の2000年初頭の肌感覚とかなり異なっている。このギャップの背景には、過去10数年で起こった最大の変化であるグローバル化の加速により、「海外」の位置付けがもはや特別なものではなくなったことがあると考える。
ここで日本企業の海外派遣の現状ととりまく環境について少し整理してみたい。
主なものとして以下が挙げられる。
一言で表せば、日本企業の海外派遣は「多様化」の一途を辿っているのである。現状に鑑みるとやはり旧来の海外派遣者報酬制度には様々なひずみが生じていると思われる。クライアント訪問をすれば「時流にあった制度に見直したい」という声が頻繁に聞こえてくる。では、時流にあった制度とは、具体的にどのようなものであろうか。現状、日本企業がかかえる制度上の課題から考えてみるのが良い。大別すると以下のようになる。
読者の企業も少なからずこれらの課題を抱えており、「時流にあった制度に見直したい」という思いがあるのではないだろうか。企業の意図に合わせた海外派遣者への適切な報酬設定は、その企業の海外戦略の足元を固めることとなるに違いない。
時流にあった制度を提案し、企業の考えるあるべき姿に近づけるお手伝いをするのが、我々コンサルタントの使命である。