執筆者: 中村 健一郎(なかむら けんいちろう)
組織・人事変革コンサルティング
プリンシパル
「いま先進国の寿命は1日5時間というスピードで延び続けている」
「2045年には、平均寿命が100歳に到達すると予測されている」
「しかも、若くて健康なまま歳をとる時代が来る」
今年の1月NHKスペシャル“NEXT WORLD 私たちの未来” で、世界の研究者の多くが予測する未来として紹介されていたコメントである。人間の遺伝情報の解析が進み“老化”のメカニズムが明らかになりつつある中で、そのメカニズムに働きかける研究の進化、再生医療の進化によって、それが実現されていくという予測がなされている。
どうも、これは夢物語ではないようだ。ゲノム解析と再生医療の進化は、かつての種痘の発明、ペニシリン等の抗生物質の発見といった疫学的な医療のイノベーションと同じようなインパクトを与えるであろうと考えられているのである。大きな違いは、以前の疫学的イノベーションは、新生児の死亡率低下に大きく寄与したが、今回のイノベーションは、平均死亡年齢の上昇という形で社会にインパクトを与えることだ。
この予測がもたらす現象は、"人は衰え、老い、天に還る"ことを前提とした、様々な社会システムに影響を与えていく。単純に考えても、社会保障、年金、各種生命・医療保険など、"年齢"と"平均寿命"を直接的な変数としてもつ仕組みに直接的な影響を与えることは明白である。
この影響は、我々が取り扱う人事の領域に強く作用していくことは明らかである。ちょっと、想像を膨らませてみた。
等、考え出すと結構影響があると考えられる。
2045年までに残されている時間は、30年。冷静に考えると非常に短い。後、30年で平均寿命が100歳に到達するということは、今、70歳を迎えた人たちは、30年後ようやく平均寿命に到達することを意味し、まだ30年もの人生が待ち構えていることを意味する。30年と言えば、少し前ならば職業人生の期間そのものである。また、働き手にとってみれば、今、35歳を迎えた人たちが、今の制度が規定する定年を迎える頃である。
今、そこにある未来として。この問題への対応を始めていかなくてはならないかもしれない。
まぁ、私個人は、番組を見ながら、「俺も、80歳くらいまで働かないといけないのかもね」と言ったら、「じゃあ、だらだらしてないで、勉強したら」と、正月気分を妻に吹き飛ばされていた問題の方が大きかったですが。