海外派遣者 処遇 小規模

「駐在員からクレームがあって、(処遇の)見直しを検討しています」との企業の声は、昨年の問い合わせ件数の半数にも上る。その中で最も多いのは、数年前に海外に初めて進出し、現在海外拠点数5未満、総駐在員数10名弱の企業である。

海外派遣者の処遇については、本社側で得られる情報が少ない一方、赴任中の駐在員の方が他社の状況を把握していることが多いため、駐在員本人から他社の処遇を比較に出され、自社処遇の検討の見直しを求められるケースが多いのではないだろうか?

「海外で頑張ってほしい!」と想いを込めて、制限がある中で苦労して作り上げた駐在員処遇が、「派遣者にはいまいち伝わっていない、むしろクレームしかこない」という悲しい話を耳にすることも少なくない。どちらも不幸せである。

海外派遣者の処遇を決定する方式として、マーサーが推奨する「購買力補償」という方式は、国内だけではなく、世界でも最もスタンダードな方式である。

購買力補償方式では、マーサーのような外部の第三者機関が提供するデータ(生計費指数/INDEX)を基に、海外で必要とする給与設定の根拠を社内に示し、説明することが可能である。導入することによって全てが解決するわけではないが、未導入の多くの企業が抱える為替の問題を解消し、本国社員とのバランスや拠点間での公平性を保つことができるといったメリットがある。

ただし、データを取得すれば終わりというわけではなく、そこから諸手当や福利厚生等、各社で決定しなければいけない項目は多い。国内制度とのバランスや他社水準等を鑑み、駐在員規程を通して、会社から駐在員へどういった"メッセージ"を伝えるべきか、マーサーではそのサポートをさせて頂いている。

筆者は海外派遣者処遇に関する業務に携わり、今まで500社ほどの企業とお話しをする機会を頂いている。いわゆる中小企業と呼ばれる企業も含め、数百社の企業に購買力補償方式の導入のお手伝いをさせて頂いた。

しかし、各社の状況や海外事業戦略は、国内制度がそうであるように各社各様であり、その中には購買力補償方式の導入が不幸せな結果をもたらす企業も少なからずある。その時には、予めご説明のうえ、購買力補償方式のご提案をこちらからお断りさせて頂くこともある。「駐在員の方々には気持ち良く海外で活躍してもらいたい」というのは我々も共通の気持ちであるからだ。

余談だが、このコラムのタイトルで検索してもマーサーのページには残念ながらヒットしない。本コラムの掲載がお困りの企業のご担当者の目に止まることを切に願う。


 

執筆者: 徳田 俊樹 (とくだ としき)
プロダクト・ソリューションズ コンサルタント

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