「あなたは仕事において、楽観主義ですか、悲観主義ですか?」
もちろん立場や状況によってケースバイケースであり、一概に決められるものではないが、筆者自身はどちらかというと悲観主義もしくは心配性だと思っている。
一例を挙げれば、仕事における確認・照会では口頭の回答は原則NGで、常にメールもしくは書面での回答を求めるようにしている。これは、あとで言った、言わない論で相互に不毛な時間を使いたくないと思うからだが、根底には、口頭の回答は信用できないといった経験に基づく心配性な思考がある。せっかく電話で速やかに回答をしていただいた時でも、後でメール回答をお願いしたり、相手がクライアントの場合は、「先ほどの電話の趣旨は・・・」といった確認メールを入れたりする。心配性も度が過ぎると、常に最悪を想定してから動き出すので、正直疲れるし、余計な手間もかかっているように思うが。
以前もこのコラムで触れたことがあるが、筆者の所属するEmployee Health and Benefits Teamでは、海外展開をしている日本企業向けに、福利厚生制度の本社によるグローバルガバナンスの必要性を訴えている。
福利厚生制度におけるグローバルガバナンスとは、
といった目的のために、本社が主体的に海外拠点それぞれの福利厚生制度を理解し、制度内容の決定に関与する体制を確立することを指している。
この議論を行うと、多くの日本企業の場合、楽観主義に基づくコメントが返ってくる。いわく
「海外拠点のことは日本では分からないので、現地担当者に一任している」
「現地担当者を信頼しており、今までも問題がなかったので変更の必要性を感じない」
「今まで一任していたものを、いきなり本社が管理するのは、現地担当者にネガティブな印象を与えるので避けたい」
これらのコメントにも一理あり、筆者も仕事でなければ、人間関係の良好な素晴らしい会社だと思うところだが、果たして本当にそれでいいのだろうか?万一、労働争議や労災事故が起きたときに、本社に不作為責任が発生するのではないだろうか?
残念なことに、海外拠点では実際に次のようなケースが見受けられることがある。
こうした問題が発生するのを防ぐために「グローバルガバナンス」が必要となってくる。日本人の担当者は「ガバナンス」という言葉に抵抗を覚えるようだが、筆者は、「緩やかなガバナンス体制の構築」が、日本企業には向いていると思う。
その第一歩として、まず、本社が海外拠点の福利厚生制度について、必要な情報を集め、内容を把握することから始めることをお勧めしたい。本社が海外拠点の福利厚生制度に関心を持っていると思えば、明らかなお手盛りは抑制できるだろうし、会社としての次の目標、例えばスケールメリットを利用したコスト削減の達成に進む準備にもなるからだ。
グローバルガバナンスは、本社がいきなりネガティブな発想に立って、長年かけて培ってきた海外拠点との信頼関係を壊すことではないということを、この先も社外向けセミナー等を通じて発信していきたいと思っている。
執筆者: 柳沼 芳恵 (やぎぬま よしえ)
保健・福利厚生コンサルティング / Mercer Marsh Benefits シニアコンサルタント
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