コロナ禍で景気が急速に冷え込んだことの反動から、その後の需要回復も極めて強いものとなりました。製造業は迅速に生産を再開し、消費者はコロナ禍で増加した貯蓄を財やサービスの消費に振り向けたことから、景気はパンデミック前の水準まで素早く回復しました。そして、金融緩和と財政刺激という政策ミックスのもと、力強い需要回復とサプライチェーンの混乱が重なり、景気が過熱する素地が整えられました
2022年が終わりを迎え、私たちは今どのような環境に置かれているのでしょうか? 景気は過熱し、そして減速し始め、中にはすでに景気後退に陥る可能性のある国もあります。私たちはまだそこまでは行っていないのでしょうか? 金融引き締めは深刻な景気後退につながるのでしょうか?
私たちは、その答えがインフレのダイナミクスにあると信じています。各アセットクラスにおける当社の見通しについては、本レポートの全文をダウンロードしてください。
インフレはピークアウトしつつあるが、解消はされていない
過去30年の間に金融業界で働き始めた人で、先進国においてインフレ率が著しく上昇するのを見たことがある人はいない。しかし、今日、様々な要因の結果としてインフレ率は1桁台後半もしくは2桁台に達しており、これらの要因には一時的なものもあれば、持続性の高いものもある。
当社は持続性の低いインフレ要因、すなわち、いずれかのタイミングで上昇が止まり、やがて低下に転じる性質を持つインフレ要因を一時的なインフレ要因と呼んでいる。
減速しているが、深刻な不況は回避
世界経済は引き続き減速することが予想される。エネルギー価格の上昇は消費者の実質的な購買力を低下させるために影響を及ぼす。しかしながら、欧州におけるエネルギーコストの上昇は、一過性で終わる可能性が高い。
エネルギー価格ショックの結果、英国はすでに景気後退に陥っている可能性が高いなど、一部の経済情勢は悪化したまま新年を迎えることになるだろう。
しかしながら、私たちは、世界経済が減速しても、深刻な事態は回避できると考えている。
金融引き締めはほどなく休止
中央銀行は2023年前半も利上げを継続する可能性が高いが、そのペースは2022年に比べて緩やかなものとなり、2023年前半から半ばにかけて、どこかのタイミングで利上げを休止するだろう。金融政策の効果は時間的ラグを伴って経済成長率、インフレ率、労働市場に表れるため、中央銀行は自分達が過去に行った利上げが実体経済にどのような影響を与えたかを見極めたいと考えていることだろう。 当社のベースケース・シナリオでは、インフレ率は18か月以内に横ばいとなり、また深刻な景気後退は生じないことを想定している。
主要なリスク要因
中央銀行に積極的な利上げを促すような高水準かつ持続性の高いインフレの顕在化は大きなリスク要因である。2023年にインフレ率が対前年比で十分に低下せず、中央銀行の政策担当者が満足する水準よりも高い水準で定着してしまう可能性もある。
既に中央銀行は必要以上の金融引き締めを実施しており、経済は既に深刻な不況に向かって進んでいるというシナリオも挙げられる。
2023年に投資家が知っておくべきことを解説したレポート『経済と市場の見通し 2023年に向けて』を今すぐダウンロードしてください。(日本語)
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