*当記事は「オル・イン Vol.64 2022年夏号」の「コンサルタント・オピニオン」に寄稿した内容の再掲載


バリュー株の分散効果

バリュー株は長らく低迷していたが、本年1-3月は、久々にバリューが対グロースで顕著に優位となった四半期であった。まだ有力な投資先候補とするのは難しいかもしれないが、ここでは敢えてバリュー株による分散効果を簡単に整理したい。

 

バリュー株のMSCI World対比のリターンでみた期間区分
 

1974年12月末のMSCI World Valueインデックスの数値の公表開始以降、バリュー株の動向は、株式市場全体と対比して大まかに以下のように区分できると筆者は考える。2022年1-3月期は局面が変わりつつあるため、分析期間に含めなかった。
 

区分 年月 大まかな特徴 バリューインデックスがMSCI World インデックスを上回った月の割合
期間① 1975年1月~2001年4月 バリュー株がMSCI WORLDインデックスより優位 56.3%
期間② 2001年5月~2017年1月 上昇局面ではバリュー株が優位も下落局面ではバ リュー劣位 47.6%
期間③ 2017年2月~2020年1月 上昇局面でもバリュー株が劣位となり、累積リターン で追随できなくなる。 27.8%
期間④ 2020年2月~2021年12月 コロナショックとその後の市場回復期。上昇局面で もついていけない状態が継続。 34.8%


バリューインデックスが、MSCI Worldのリターンを上回った月数の割合は、期間①~③においては低下基調である。期間④はやや持ち直しているが依然低水準であり、超過収益を期待できなくなっている事が再確認できる。他ファクターとの相関はどうだろうか。クォリティ、最小分散、小型株の各インデックスとのMSCI World対比アクティブリターンの相関係数を期間区分毎に算出すると下表の通りとなった。
 

バリューインデックスと他ファクターインデックスとのアクティブリターンの相関係数

期間区分 クォリティ 最小分散 小型
期間① -0.30 **0.51 -
期間② -0.46 0.00 -0.01
期間③ -0.69 0.00 -0.06
期間④ -0.66 0.00 0.44
 *MSCI World クォリティインデックスの指数値公表開始が1979年12月末のため1980年1月~2001年4月の期間で算出
**MSCI 最小分散インデックスの公表開始が1988年5月末のため1988年6月~2001年4月の期間で算出


クォリティとは、後の期間になるほど逆相関が強まっている。最小分散とは期間②以降ほぼ無相関を維持、小型株とは、期間②③では相関が観測されなかったが期間④では順相関が現れている。

 

バリューと他スタイルを併用した時のリスク量の変化
 

では、実際にバリューとパッシブファンド或いは、他ファクターを組み合わせたときのリスク量はどうだろうか。下表は、期間④において、バリューインデックスと各ファクターに該当するインデックスとを50%ずつ組入れたときのリスクの変化である。


期間④における、バリュー株と他ファクターを併用した場合のポートフォリオのリスクの変化

ファクター 絶対リスク バリューと50%ずつ組入れたときの絶対リスク 単独でのアクティブリスク バリューと50%ずつ組入れたときのアクティブリスク
バリュー 20.43% - 6.00% -
MSCI World 18.41% 19.21% - 3.00%
クォリティ 17.07% 18.15% 4.90% 2.29%
最小分散 14.07% 15.30% 7.49% 5.42%
小型株 23.06% 21.44% 8.20% 6.04%
対象期間は何れも期間④

 

絶対リスク水準については、バリュー自体の絶対リスクが他と比較して高いため、小型株を除けば、分散によるリスク抑制効果は確認できない。一方、MSCI World対比のアクティブリスクは、いずれも単独のファクターよりも低い結果となった。

 

まとめ
 

上記から、バリューをポートフォリオに追加することにより、絶対リスクの抑制はあまり期待できないが、グロースのみならずクォリティ、最小分散に対しても一定のアクティブリスク抑制効果を期待できることが分かる。バリューのリターンが持続的に回復するか慎重に見定めるべきだが、投資対象としての検討余地は残っている。

 

執筆者:新行内 展博 (しんぎょうじ のぶひろ)

資産運用コンサルティング部門 コンサルタント

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