*当記事は「オル・イン Vol.63 2022年春号」の「コンサルタント・オピニオン」に寄稿した内容の再掲載


2022年の投資テーマと投資機会

新型コロナウィルスの感染拡大をきっかけに投資家を取り巻く環境は一変し、世界は今もなお変わり続けている。投資家にとって、将来の金融、社会、政治情勢を牽引する可能性が高いテーマを考慮したうえで意思決定することが今後益々重要になる。ここでは、2022年に注目すべきテーマについてご紹介したい。
 

(1)インフレ対策

米国を中心にインフレが加速する中、多くの投資家は久々にやってくるインフレへの備えが十分でない可能性が高い。インフレへの有効な対応策として、短期的には金やコモディティへの投資、長期的には不動産やインフラなどの実物資産への投資が挙げられる。また、流動性制約を一定程度許容できる投資家にとっては、プライベートデットやストラクチャードクレジット等の変動金利資産の採用も有益である。金利上昇リスクを緩和しつつ、比較的高い利回りを享受できる点において魅力的な投資対象と言える。
 

(2)分散投資の再考(伝統的なβからの脱却)

株式からの分散において従来主力選手であった債券は、インフレの加速に伴い、足元、金利上昇リスクにさられている。金利上昇が落ち着くまでの間は安定的なプラスリターンの獲得は難しく、企業年金などの多くのアセットオーナーが債券に一定割合を投資していることを考えると、ポートフォリオ全体でもこれまでと同様なリターンの獲得は難しくなると想定される。そこで改めて分散投資について考えたい。伝統的なβに依存しないアクティブ戦略の活用、プライベート資産やβニュートラルに近いヘッジファンド戦略の採用も有効な手段になる。また、今後長期的には企業間の成長格差が拡大し、マネージャーのパフォーマンスにも格差が広がると予想される。それゆえ、マネージャー選定の重要性がさらに高まる点には留意が必要である。
 

(3)気候変動対応、ESG投資

世界各国で2050年にCO2排出量をネットゼロにすることが目標として掲げられる中、海外ではポートフォリオにおける気候変動対応の目標を表明するアセットオーナーが増えている。日本ではまだ顕著な動きは見られないものの、ESG投資への取り組みを検討するアセットオーナーは着実に増えていると感じる。その際、ESGをテーマとしたアクティブ戦略、ESGを考慮した指数に連動するパッシブ戦略の採用などを検討するケースが多い。まずはできる範囲で小さく一歩を踏み出し、徐々に取り組みを拡大していくことをお薦めしたい。

 

執筆者:岸田 理恵 (きしだ りえ)

資産運用コンサルティング部門 コンサルタント

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