コンサルタントコラム 718
3x3のパターンから見る『データアナリティクス』と組織・人事分野における活用事例

アナリティクス、ビッグデータ、コグニティブ等の類のカタカナ言葉を耳にしない日はない。これらのキーワードを皆さんはどのように捉えているだろうか。

  1. 聞いたことはあるが言葉の意味はイマイチよくわからない
  2. 言葉の意味はわかるが具体的な活用のイメージがわかない
  3. 製造品質やマーケティングへのデータアナリティクス活用ならわかるが組織人事ではまだまだ…

実際には、組織人事のデータアナリティクスは急速かつ確実に進展している。 本稿では、データアナリティクスでできること、そして既に業務適用が始まっている組織と人事のデータアナリティクス事例をご紹介する。

まず、はじめに上記のキーワードを簡単に振り返っておこう。

データ活用とは、これまで蓄積することが難しかった量や性質のデータ(ビッグデータ)を、主に統計手法を用いて分析(アナリティクス)することで、成果として新たな気付きを創出し、さらにそれらの経験を通じた学習(コグニティブ)により継続的に分析の精度向上を図ることをいう。大切なのは、分析(アナリティクス)を活用してどんな価値を生み出すか、である。

「データをアナリティクスして何をするか = ビジネスケース 」を考えてみる

企業におけるアナリティクスの始まりが「うちもビッグデータ?アナリティクス?どちらでもいいから、とにかく始めてくれ」といった曖昧な指示であることは少なくない。そこで、「アナリティクスして何をするか」という最も重要なビジネスケースを考えようとするとこれが意外と難しい。

ビジネスケースのアイデア創出の際に使用するフレームワークの一例をご紹介すると、下図のようになる。

・気づきのレベル: アナリティクスの付加価値

【気づき Level 1 】 既知事象の検証(現場のマニュアルに掲載されているルールやコツ)
-論理的に説明がされ既知の事象となっていることを、データアナリティクスを用いて定量的に検証・証明し確実なものにする

【気づき Level 2 】 暗黙知のモデル化(職人ワザとよばれる経験に基づく知識や技術)
- 因果関係があることは認められているが発生条件や原因を明確に説明できない事象に対して、データアナリティクスを使って発生条件の数値化や因果関係をモデル化することで、コントロール可能なものにする

【気づき Level 3 】 新しい洞察(原因不明で予測不能とされてきた積年の課題)
- これまでメカニズムが明らかにされてこなかった問題や事象に対して、データアナリティクスを適用して、新事実や新しい因果関係を解き明かす

アナリティクスというと Level 3 ばかりをイメージしがちだが、運用されている事例は Level 2 の方が多く取組みやすいのが実際である。

・気づきのパターン: 主な分析手法の類型

データアナリティクスといっても、実際には統計手法をベースとした分析を行うケースが多い。本稿では、統計学に明るくない方にもイメージいただきやすいよう主な分析手法を 3つに類型化した。

【未来予測型】 「夕日がとってもキレイだから明日は晴れだ」
- 予測したい結果とその原因の履歴・ログデータから、結果と原因の因果関係をパターン化し、まだ結果が出ていない時点で、原因データから将来に発生する結果を予測する

【異常検知型】 「接待で仕方なく呑んだと言うけれど、いつもより瞬きの回数が多い…嘘かしら!?」
- 予め「通常」や「うまくいっている」状態をデータで定義しておき、日々収集するデータがそれから外れた場合に異常発生と判断する。過去に発生した異常とデータの外れ方をパターン化しておけば、異常を検知した瞬間に異常の内容まで把握することも可能

【グルーピング(クラスタリング)型】 「30代になった瞬間、アンチエイジングエステと結婚紹介所のDMばかり届く…なぜだ」
- 異なる性質のものが混ざり合っている対象(ex. 従業員等)の中から互いに似たものを統計的にグルーピングし分類する。各グループに適した対応や施策を検討することができる

既に始まっている「組織と人事のデータアナリティクス」の実例

アナリティクスに積極的な企業においては、既に組織人事に関するアナリティクスに着手されており、人間の思考を刺激しひらめきを与えることを主目的に業務運用にまで至っている企業もある。

【従業員の離職リスク分析】 辞めそうな人予測
- 直近の業績や報酬、現職位での滞留年数、市場報酬水準、離職者履歴等をインプットに、従業員の「離職リスク」を判定する。リスクの高さによってリテンション施策を検討(赤)、要観察(黄)、心配なし(緑)などの判定シグナルを立て、評価やフィードバックの参考情報として組織長に提示する

【採用面接の合否判定】 入社後に活躍しそうな人予測
- 面接時の受応えや、評価コメント、入社後の業績の履歴を基に、高業績社員の面接時の振る舞いをモデル化する。新規採用において、面接中もしくは面接後に参考情報として「合否判定(案)」を提示させ、面接官がもつクセや偏りを見直す機会をつくる

今回ご紹介したのは「既に適用されているデータアナリティクス」の事例であるが、机上での分析に限れば、より先進的なテーマへの取組みが始まっている。機会があればデータアナリティクスの最先端にも触れてゆきたい。また、このコラムを機に組織人事の領域でデータアナリティクスを使って何ができそうか?ということを少しでも思い描いていただけたとしたら幸いである。