コンサルタントコラム 696
グローバルリーダーとは?
松見 純子

執筆者: 松見 純子(まつみ じゅんこ)

組織・人事変革コンサルティング シニア コンサルタント

多くの企業において、今後の持続的な成長のためにこれまでにない規模と速度でグローバル化を進めようとしている。もっとも、こうしたビジネス戦略の実行をリードする人材について十分に備えができていると認識している企業は少ない。因みに、こうした状況は日本企業のみならず、欧米企業においてもみられ、顧客ニーズ、市場、サプライヤー、競合、社員等の多様化が進む中で、自分とは異なる考え方、文化背景等を持つ他者に対する知識と受容・対応能力を持ったグローバルリーダーの育成に取り組む動きが見られる。

グローバルリーダーは何もグローバル企業の役員やクロスボーダーに事業を束ねる部長にとどまるものではない。グローバルリーダーとは、地理的なまた文化的な境界を越えて働く全ての人と考えている。担当者であっても、より多様な社内または社外の人々と関係を持ちながら、国をまたがるリージョンを相手にしたり、またはグローバルな役割を担ったりするケースも増えて来ている。よって、グローバルリーダーに求められる成功要件をより多くの人々が身につけなければいけない状況になりつつある。

マーサーがヨーロッパで行った調査1によると、62%の企業がリーダーシップ戦略及びリーダーに求められる資質を定義し、後継者を特定するための基準とプロセスに用いている。しかしながら、ビジネス側からも「定義した資質が競争優位を創り出すことにより本当にビジネスの成果につながっている」と同意を得られているのは、そのうち21%に過ぎない。

1) Mercer Leadership Survey covering 215 companies in the UK and across Europe, 2015

リーダー育成の目的は成長(83%)、イノベーション(71%)、グローバライゼーション(55%)とされているが、現在の企業を取り巻く激しい環境変化の中で結果を出すことはさらに困難化しており、常に現状に疑問を呈し、速いスピードで対応し続ける姿勢を必要とする。変化し続けるビジネスの文脈の中で真にインパクトを与える行動が十分に定義されていない点が指摘されている。

マーサーでは、激しいマーケット、ビジネスモデル、人材の変化の中で、グローバルに活躍するリーダーの特性を以下のように定義している。

グローバルリーダーに求められる力

まず、グローバルリーダーとして成功するか否かに重要な要因として基礎的な力が必要となる。文化的なバックグラウンドを共有しない人を含むチームや個人を効果的にリードしていくために重要な基盤となる。さらに、グローバルリーダーが一般的に業務を行う変化の激しい事業環境の中では、保有する知見やスキルセットをストレッチすることが求められる不測の事態に直面する。このため、グローバルリーダーは多様な文化や考え方の存在するグローバルな環境の中で、柔軟な学習能力なしには成功し得ない。

基礎的な力に加えて、複数の文化の交錯する文脈の中で、効果的にリードするためのスキル及び知見が必要となる。最も重要なのは、多様な文化特性を持ったチームを動機付け、リードする能力である。動機付けは同じ文化の中でもやさしいことではないが、異なる文化の他者を動機付け、リードしていく際には、自己の文化で成功したやり方が必ずしも異なる文化においてはうまく行かないという悩みに直面しがちである。場合によっては、これまで身に着けたやり方を捨てて新しいやり方を習得する必要があるケースもある。こうすることにより、異なる文化、異なるマインドセット、慣れ親しんだものとは異なる文脈の中で、新しいチームを率いることができるようになる。複数の文化を含むチームをリードする能力は、柔軟な学習能力、忍耐力、感情的な安定、文化的許容度に依存する。

最後に、異なる国の文化、経済、政治、市場の複雑性に関する重要度を認識し尊重する姿勢を含むグローバルマインドセットである。高いレベルのグローバルマインドセットを保持するリーダーは、事業を行う各国において、言語化された内容に加え、行間に関しても読み取り、適応していくことができる人材である。

自社の文脈の中で、自社のビジネス戦略の実現を支えるグローバルリーダーに必要な要件を特定し、そこに向けて何を強化すべきかを、総体として、または個人として捉え、計画的に取組んでいくことが中長期的な発展のために不可欠と言えよう。